当社の病院清掃業務においては、年2回程度、病院のスタッフの方々とミーティングの場を設けるようにしています。会議の名称は「どこまでディスポ会」。清掃資機材をどこまでディスポーザブル化できるか、すなわち、「どこまでディスポーザブル用品を使用して、『使い捨て化』できるか」について話し合う会議です。
会議では、清掃方法などの技術面や、接遇などのマナー面について意見交換も行われますが、環境整備や感染対策、清掃資機材の改善などの観点から、ディスポーザブル用品の導入について、多くの時間を割いて話し合いが行われているので、社内では「どこまでディスポ会」と呼ばれています。この「どこまでディスポ会」が発足しておよそ1年が経ちました。従来の病院清掃業務がもっと高品質のものになり、病院側からの満足度もますます向上していると自負しています。
今回のニュース&トピックスでは、この「どこまでディスポ会」発足の過程で起こった社内外の変化と、そこから得られた知見について、お伝えします。
※この記事は、「月刊ビルクリーニング」(2020年2月号)に掲載されました。
どの病院清掃現場であっても、病院スタッフの方々と当社との間で、「病院清掃会議」という会議の場を設けるようにしています。病院からは、ICTチーム(Infection Control Team、感染対策チーム)の医師、看護師と、管理担当部署の方々が出席し、清掃に関する伝達事項や打ち合わせなどを行います。しかしこの場では、通り一遍の報告などに終始することが多く、日々の実務レベルでの打ち合わせについては、管理担当部署との二者会議で行われることがほとんどでした。
2019年に入ってから、お取引先の「病院清掃会議」において、感染対策について、もっときちんと話し合うべきではないか、ということになりました。病院側の管理担当部署の采配により、当社としては初めて、「感染対策」という明確なテーマを掲げた会議に出席。ディスポーザブル用品についてなど、現場レベルでの具体的な議題が取り上げられ、非常に有意義な意見交換の場となりました。このことが転機となり、病院ICTチームと清掃会社である当社との距離が、一気に縮まったのです。
その後、ICTチームと当社との二者会議も行われるようになりました。そこであるとき、洗面台用のスポンジやトイレブラシといった水回りの清掃用具には、すべてディスポ用品を導入してほしいという強い要望が寄せられました。これに対して当社は、「これらの清掃用具は、洗浄・除菌・乾燥という工程を取り入れることでほぼ除菌することができるため、ディスポ用品を取り入れる必要はないのではないか」とご提案しましたが、ICTチームは、「それでは困る、あくまでもディスポーザブル化が理想」との返答。当社は「ディスポーザブル化すると、これだけコストが上がります」とご説明したところ、「それなら仕方ない、導入は難しいね」と、その場ではディスポ化を断念。
納得していただいたものの、結局、何も改善できなかったという、お互いに後味の悪い結果に終わってしまいました。おそらくこうしたことは、現在、当社だけではなく、多くの清掃会社やビルメンテナンス会社でも起こっているのではないでしょうか。
右画像:左 | 資機材の聴き取り調査をする当社ビルメンテナンス事業部 主任 山本 亮 |
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この課題が解決したのは、次の病院清掃会議のときでした。水回り清掃用具の全面ディスポ化について、管理担当部署が提案するコストとの兼ね合いを考えた結果、すべてをディスポーザブル化するのではなく、定期的な交換サイクルを設けるという妥協案に落ち着くことができたのです。
このことがきっかけとなり、この病院清掃会議は、「どの資機材をどこまでディスポーザブル化するのか」といった、非常に具体的な課題解決の場へと変貌。これまで平行線をたどるだけだったいくつもの議案が、一挙に解決したり、解決への糸口を見出せたりするようになりました。
たとえば、手術室や手術室共用部の早朝清掃(業務開始前清掃)において、ICTチームの「ディスポ化したい」という希望に、当社の予算や人的要因、そして管理担当部署が算出したコストが合致し、マスク、手袋、ヘアキャップの完全ディスポーザブル化を実現。また、インフルエンザやノロウイルス感染症が流行する時期だけ臨時予算を組むことによって、期間限定とはいえ、サージカルマスク、嘔吐処理セット、 擦式アルコールジェルを病院側から完全支給してもらえたケースもあります。
こうして、「病院清掃会議」という漠然としたミーティングの場が、感染対策という共通かつ明確な目標をもつことによって、様々な課題、特に、ディスポーザブル化の問題の解決がみられるようになりました。こうして社内では、いつの間にか「どこまでディスポ会」という呼び方が定着してしまいました。
「病院清掃会議」のようなものは、恐らく多くの病院において行われていますが、清掃会社がICTチームと会議を行うというのは、この業界の中でもあまり聞くことがありません。ほとんどの病院において、清掃業務に関わるのは、ICTチーム、病院管理部署、清掃会社の3者です。ICTチームは感染対策の観点から適切な清掃方法を検討するのが主な役割ですし、管理担当部署は必要な予算を決めて清掃受託会社を決定するのが主な役割です。また、清掃会社は最適な清掃方法をご提案し、自分たちの技術を用いて清掃業務を実施します。つまり一般的には、「ICTチーム→管理担当部署→清掃会社」という一方向の流れが定まっていて、それにより、スムーズに病院清掃業務が遂行されていると言えるでしょう。
しかし、この流れにはデメリットもあります。それぞれの立ち位置が固定化し、流れが一方向であるがゆえに、ICTチームの意向がダイレクトに清掃会社へ反映されにくく、ICTチームには清掃会社のもつ技術や知識が見えにくいのです。ミーティングも、管理部署と清掃会社との間で行われる場合がほとんどで、ICTチームが加わるのは、顔合わせや業務連絡といった形式的なものになりがちでした。
ICTチームと直接話し合うことによって、私たちはICTチームの意図や方向性をダイレクトに受け取ることができますし、ICTチームにとっても、感染対策を実務レベルで考えていただくことができるのではないかと思います。
ICTチームは、感染防止の知識を持っているものの、好きなだけ予算を組めるわけではありません。病院の衛生管理を第一に考える組織ですから、感染対策の一環として、使い捨ての清掃用具をできるだけ取り入れて欲しいと考えるのは当然です。なぜならその方が管理が楽で、しかも、感染源をもとから断つことができるため。つまり、ディスポ用品は感染対策の基本とも言えるのであり、ほとんどの病院が、できるだけディスポ用品を導入することを希望します。
また、管理担当部署は、できる限りコストを抑え、予算内で健全な病院経営を目指しています。ただし、感染防止や清掃技術の両方について専門知識を持っているわけではない場合がほとんどです。
一方、清掃会社はコストのことでことを荒だてたり、高額な見積もりを出して受注のチャンスを逃したくないという気持ちがありますし、病院に対して「これだけのコストで、これだけのことをしましょう」という積極的な提案をしにくいという実情があります。ディスポ用品はどうしてもコスト高になってしまいますし、できる限りコストを抑えて、低い見積もり金額を提示して清掃業務を受注したいと考えます。
このように、ICTチーム、管理担当部署、清掃会社には、それぞれの強みや役割が固定化されています。病院清掃において重要なキーパーソンであるこれら3セクションが互いに好影響を与え、スムーズに意思疎通できることが、それぞれの強みを活かすことにつながるでしょう。このようなチームワークを築くためには、「同じ目的を共有すること」が不可欠です。3セクションが漠然と一堂に会するだけでなく、お互いの強みや役割を踏まえたうえで、明確な目的を設定し、共通の目標を確認しあうことが必要なのです。「患者様の安全」という同じ目的をもっているのだ、という認識を共有することが、真に協働していくための第一歩なのではないかと思います。
当社も以前は、「コストを抑えなければ、契約を失ってしまう」という固定観念にとらわれて、積極的な提案を控えてしまっていました。つまり、感染対策の重要性を認識していながらも、いつの間にか「低コスト」を目標としてしまっていたのです。しかし、予算を考えるのは、本来、私たちの役割ではありません。私たちのやるべきことは、プロの清掃会社の視点から、感染対策上、ベストな解決策をご提案すること。感染対策という目的が明確化したことで、改めて自らの役割に気づき、ビルメンテナンス会社としての原点に立ち戻ることができました。
従来、当社には、本社の現場担当社員が病院を訪問し、運営担当者と定期的に面談する「ラウンド制」という仕組みがありました。現在は、この「どこまでディスポ会」をラウンド制とも連動させることで、病院上層部へのより密な"報連相"を展開できるようになり、その結果、来年度の予算にも当社への費用を見込んでもらいやすくなりました。そのため、以前に比べて長期的な視点による現場管理が可能になりました。
また最近の「どこまでディスポ会」では、目が届きにくい天井や高所についても、もっときめ細やかに清掃業務を行おうというアイデアも出ました。その結果、防煙垂れ壁や蛍光灯周囲など、静電気で埃が付着しがちな隅や、でこぼこが多い階段状の天井の隅には、フラワークリーンという、埃を吸着して除塵する、柄の長いディスポーザブル資機材を、日常清掃にも導入することになりました。
当社はこれまでも、床だけを重視しがちな従来の平面的な清掃に疑問を唱え、清掃箇所を立体的に捉える3D清掃を追求してきましたが、病院側との話し合いの仕組みを整えることで、当社の理念が病院に受け入れてもらえるようになったのです。これは、当社にとって大きな節目となり、また、当社の清掃スタッフにとっても、「これまで自分たちが努力してきたことが病院に認められた」という、大きな自信につながりました。
さらに、日常清掃だけでなく、定期清掃においても新規の依頼を受けるようになったことも、予想外のできごとでした。「どこまでディスポ会」を開き、病院側との意思疎通を細やかに行うことによって、感染対策を踏まえて、病室の天井埋め込み式エアコンだけでなく、事務棟などの壁掛け式エアコンの洗浄の依頼も受けるようになったのです。
また、病院には、日常清掃でも定期清掃でもどうしても目が行き届かない、"抜けやすい箇所(未清掃エリア)"というものも残念ながら存在します。たとえば、非常階段や非常口は、鳥の糞などがよく落ちていますし、通常は施錠されていて、緊急時だけ、しかもマスターキーでしか開けられないような場所は、長期間、汚れを放置してしまいがちです。しかし、「どこまでディスポ会」を開催し、ICTチーム、管理担当部署、清掃会社が「本当に望ましい病院清掃業務とは何か?」を、顔を突き合わせて話し合うことで、「病院の隅々までもっときれいにしよう」という意識が、当社と病院、両者ともこれまで以上に強まったように思います。こうして、思いがけず受注が増えるという嬉しい結果にもつながりました。
最近、当社では「どこまでディスポ会」を三者会議ではなく、四者会議にしてはどうかという意見も出ています。 病院のICTチーム、管理担当部署、清掃会社に加え、資機材メーカーを参加させるのはどうか、というのです。確かに、資機材メーカーにも会議に加わってもらえれば、最新の資機材情報を教えてもらえたり、シーンやニーズに応じて最適な資機材を紹介してもらえたり、さまざまなメリットが得られるでしょう。しかしその一方、会議では商品のコストや性能、納品数といった細かなことに焦点が当たるようになり、話がまとまらなくなるのでは、といった懸念もあります。それでは、「木を見て森を見ず」といった状況になりかねません。まずは、資機材メーカーと清掃会社がもっと連携し、最新の情報を共有しあうことから始めよう、と、準備を整えているところです。
当社では、病院清掃の現場に接遇リーダーと技術リーダーを設置していますが、最近、これらのリーダーが「病院清掃受託責任者」の資格を取得しました。「病院清掃受託責任者」とは、社団法人全国ビルメンテナンス協会の病院清掃受託責任者講習会を修了した者に付与される資格で、医療機関の社会的役割と組織、医療関係法規、作業の点検及び業務の評価、感染対策などについて幅広く学びます。これからも当社では、この資格の取得者を増やしていきたいと考えています。そうすることで、本社のラウンド員だけでなく、現場スタッフも「どこまでディスポ会」に参加できるようになり、現場スタッフが病院との一体感をより感じられるようになるでしょう。これにより、スタッフのさらなる貢献意識や責任感、また、現場におけるより緊密なチームワークにつながるようになるのではと期待しています。
現在、日本では健康に対する意識が高まり、病院の衛生管理について社会の目はますます厳しくなっています。当社としても、病院とともに「患者様の安全を守る」というミッションを掲げながら、ますます清掃業務に注力していきたいと考えています。そのため、これまでよりも一層強く、スタンダードプリコーション(標準予防策)を遵守して、病院をご利用になるすべての患者様や、そこで働く医療従事者の方々など、あらゆる人に万全な感染対策を講じ、感染を広げない清掃を遂行していきます。
当社独自の仕組みである、「リーダー制」や「ラウンド制」を基礎に、「どこまでディスポ会」などで関係各所とも密に連携しながら、風通しの良い、"報連相"に重きを置いた清掃業務を実現したい。そして、スタッフ一人一人が責任感を持ち、みずからの意思で自発的に清掃業務に携わるよう、教育体制もさらに充実させていきたい。まさにいま、当社は受け身の清掃から脱却し、能動的に、自ら考えて提案する清掃会社へと脱皮をし始めています。
清掃管理 | 建物の機能とグレードを保つには、毎日の清掃をはじめ、日常清掃ではカバーできない定期的な専門清掃が重要。熟練したスタッフによるプロの作業技術で、訪れる人やそこで暮らす人々に、安全で快適な建物環境を提供します。 ●清掃(日常、定期、特掃、巡回) ●特別清掃(窓ガラス、外壁洗浄、大理石研磨等) ●塵芥処理 ●グリストラップ清掃 |
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警備・保安サービス | いつ起こるか分からない事故や犯罪などのトラブルを未然に防ぐために、効率的な防災・防火・防犯管理業務を行い、緊急時に迅速に対応できる体制を確立します。専門教育と訓練を受けた警備員が、建物イメージを損わないマナーを大切にしつつ、皆様の安全確保に努めます。 ●常駐警備 ●巡回警備 ●駐車場警備 |
環境・衛生管理 | 衛生的・健康的な建物環境を保持するには、空調や給排水システムの厳格なチェック体制が欠かせません。建築基準法やビル管理法など関連法令に基づき、室内空気環境測定や水質測定を適切に実施し、改善策の提案を行っています。 ●室内空気環境測定/空調設備運転・保守 ●水質測定/水槽類・排水管洗浄 ●ねずみ・害虫類の防除 |
設備点検・管理 | 建物内部の電気設備や防災設備を保守点検し、安全で効率的なメンテナンス作業を行うと共に、万が一のトラブルの際には迅速に修理・対応いたします。築年数の経過したビルから最新式の建物まで、あらゆる設備に対応するエンジニアが業務に当たります。 ●設備の保守・日常点検 ●設備の法定点検 ●各種修繕工事 |
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造園・植栽管理 | 都市の緑化対策が推し進められる近年、ビル・マンションの緑地もますます重要視されています。緑の特性や環境に配慮した植栽管理技術を駆使して、お客様のニーズに沿った快適なリラクゼーションスペースを提供します。 ●定期剪定 ●雑草の除去、消毒作業 ●緑地改修の提案 |
スチュワード業務 | ホテル、レストラン、宴会場のスチュワード業務を、作業の効率化や品質の均一化を重視しながら実施します。 ●食器洗浄 ●食器メンテナンス ●食器保管・管理(インベントリーチェック) ●セッティング・スタンバイ ●ヤード回収/ギャベジルーム管理 |
その他 | リフォーム工事、大規模修繕工事、退去立会代行・原状回復工事、不動産売買仲介、資産活用のご相談等 |
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